<第4回>月夜の徒然
一心敬礼
夜長月「よながつき」の候。今年は稀にみる残暑の日々が続きましたが、皆さまお変わりございませんでしたか。つつがなくお過しになられましたでしょうか、お伺い申し上げます。
暑さ寒さも彼岸まで、昔から言い伝えられてきた言葉です。秋の御彼岸は、私も慌ただしく東奔西走と走りまわりました。またこの時期は名月を愛でるには相応しい秋の夜長となります。古くから受け継がれてきた秋の風物詩「中秋の名月」お月見は、十五夜ともいいます。満点の星空の中、神秘的に燦然と輝くお月さまを眺めておりますと、平安のいにしえにタイムスリップした感さえおぼえます。
皆さまに読んで頂いております今日は幾夜でございましょうか、下弦の月あたりでございましょうか?確かに満月は美しいものですが、欠けた月もまた哀愁の風情がありますね。「月みる月は月なれど、今宵みる月は月々の月」なぁーんて、日本人のボキャブラリーですが、今宵の月に名前をつける豊かな感性が日本人なのです。
さて、昨年は人類が月に降り立ってから40周年を迎え、人工衛星「かぐや」が話題となりましたが、今年は10万人を超える人々が注目した、日本の小惑星探査機「はやぶさ」の活躍に感涙致しました、また今月11日準天頂衛星「みちびき」が満天の星空の中飛び立ちました。まさに月や宇宙はロマンの宝庫だといえるでしょう。
ところで、秋の夜長の楽しみはただ夜空を眺めるに非ず。そこは先ず一献、一人でしみじみと風流を楽しむもよし。仲間達と優雅に楽しむもまたよし。昔は、中秋の名月には古式にのっとって、三方に十五夜の名にちなんで15個を積み重ね、里いも、柿、栗、豆などの収穫物、すすき、萩、ききょうなど、秋の七草などを並べ、月を奉っていました。
秋の七草の一つであるすすきは、江戸時代には暮らしの中で身近によく利用されていた資源であると同時に、霊力があるとさるる植物でした。また、供え物の中で特筆すべきは里いもの存在です。折しも中秋の名月の頃からは里いもの収穫期。里いもは日本人が米を主食にする前まで、主食の座にあった食べ物でした。古来日本全国の秋は「村の鎮守様の秋祭り」と祝うように、秋の豊作に感謝する感謝祭と、初穂祭りと結びついた農工行事でもあったのです。
如何でしょう。皆さまも岡埜栄泉の銘菓「塩大福」でも戴きながら、秋の夜空に一つ俳句でも詠んで風情を楽しみませんか。
夏はよる。月のころはさらなり(青少納言『枕草子』より) 合掌
釈 正輪 九拜
釈正輪老師のプロフィール
1959年愛知県一宮市生まれ。正眼短期大学宗教学部禅学科卒業、佛教大学文学部佛教学科中退。梶浦逸外(かじうらいつがい)「臨済宗妙心寺派官長・正眼寺住職師家・正眼短期大学学長」、大森曹玄(おおもりそうげん)「高歩院住職・花園大学学長・鉄舟会師家」、黒田武志(くろだぶし)「横浜善光寺開山・留学育英僧会会長」、李西蓊大宗正(りさいおう)「曹渓宗白羊寺官長・高麗寺官長」の四大老師に師事、禅(臨済宗・曹洞宗)・真言・天台の三宗を兼学する。中部の霊峰高賀山で「千日回峰行」(せんにちかいほうぎょう)を達成、大阿闍梨(だいあじゃり)となり、密教の荒行「入水往生」(じゅすいおうじょう)並びに山岳回峰「六社巡り」を復興、25年間に渡り継続する。しかし形骸化した僧界に疑問を抱き、普遍的根源を求め、世界宗教の聖地巡礼を行う。中でもヨルダン川での洗礼や、イスラームの聖地、マッカ大巡礼は偉業と言われている。更に、マザー・テレサの信仰実践とダライ・ラマ十四世の宗教的覚醒に 触れたことが、宗教活動に大きな変化をもたらした。世界の皇室関係者や国家元首をはじめ、宗教指導者との交流も深く、特にスリランカ大菩提会会長バナガラ・ウパテッサ大僧上とは旧友の仲である。高校で教鞭をとり、天台寺門宗本山布教師等を経る。日本国並び日本人の生き方を提唱、再認識し実践とする日本大僧伽(やまとだいさんが)主宰。教育施設MAO塾経営。NPO希望塾相談役。国際地球環境大学(シンクタンク)文学博士・仏教学名誉博士。
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